<静岡市駿河区にある小さな酒屋の、お酒関連の話とオタク系趣味な話とかのブログ>
2009年10月29日 03:34



静岡県民にとって、「開運(かいうん)」というお酒の名前を聞いたことある人は結構居るかと思います。
今でこそ「静岡の地酒」というのは全国的に見てもとても人気があり、その吟醸造りのお酒は多くの人を魅了しています。
そんな静岡の地酒をずっと牽引してきたのがこの「開運」であり、その蔵元「土井酒造場」であり、そこでお酒を醸(かも)してきた名杜氏「波瀬正吉(はせしょうきち=本名:はせまさきち)」氏であります。
この波瀬正吉氏は、杜氏集団「能登杜氏」の四天王の一人です。
ちなみに能登四天王は、「満寿泉」の三盃幸一氏、「常きげん」の農口尚彦氏、「天狗舞」の中三郎氏、そして「開運」の波瀬正吉氏。
そんな波瀬正吉氏ですが、今年2009年の7月16日に他界されました…。76歳とのこと。
開運のお酒には、「波瀬正吉」という杜氏名を付けたお酒があります。これは、杜氏が「これならば!」という最高の出来のお酒に自らの名前を付けた渾身の1本。
…今でこそ、杜氏名を付けた自信作を出す蔵元は多くありますが、聞くところによると、それを一番最初に行ったのはこの波瀬正吉氏とのこと。…酒造りに対する「熱意」と言いますか、もちろん「責任」だってあるわけですが、「生き様」を強く感じさせます。
「波瀬正吉」というお酒は通常は「大吟醸」です。一升(1.8L)で10,500円します。
しかし今回は、更にその上のランク…「純米大吟醸」のお酒が、なんと限定50本作られていました。価格は同じです。
当店にも1本だけですが、入荷致しました。
…分かる人ならばこのお酒がどれだけ貴重なものかが分かる、という代物。静岡酒を愛するものならば誰もが口にしてみたいお酒。酒屋さんとしては、たとえ1本でも販売できることが喜びとも言えるようなお酒、であります。
だから、静岡の地酒が好きな人に呑んでほしい…。「味が細かく分かる人」っていうことじゃあないんです、「開運の杜氏さんの遺作」というのを感じながら、波瀬正吉氏のことをなんとなくでも思い浮かべながら呑んでほしい、…私はそんな感じで思っています。

波瀬正吉氏です。
瓶の裏ラベル(裏貼り)に書かれてる文章。…見れる機会はなかなか無いものですが、波瀬正吉氏の生き様を垣間見れるような、そんなフレーズなのでぜひ読んでほしいと思い、以下に写させていただきました。
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波瀬正吉は、「清酒開運」を昭和四十三年より造り続けている。
酒男になったのは、昭和二十五年である。そのとき、実姉の夫に、「いちばんきびしい人のところへ行け」と言われ、静岡県の蔵で杜氏をしていた人についた。その人はあまりに口やかましい人であった。そのようなおやっさん(杜氏)に勤まれば、あとどこへ行っても大丈夫だという義兄の思いやりだった。この杜氏の下で九年働き酒造りの基本を学んだ十年目に輪島の蔵の頭になり、ここで七年、杜氏の片腕として腕を上げ、いよいよ杜氏となって土井酒造へ入った。
能登の人は仕事がかたいというが、今、七人の蔵人と力を合わせて『開運』を造っている。
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私はこの純米大吟醸、すでに味わせていただいてます。
その味わいは恐ろしくキレイで、日本酒のイヤらしさなんて全然ありません。なので、もちろん呑みやすくキレも良い。そして残り香は軽くフルーティーで心地良い余韻。
先日名古屋の国税局で利いてきた「大半の吟醸酒」とは全く相反するお酒ですが、「お酒は香りだけではダメ」と、つくづく思い知らされるような、そんな優しいお酒でした…。さすがですよ、波瀬さん(つД`)
…ちょっと熱くなってしまいましたが、1本だけ当店にあります。専用の化粧箱に入って10,500円(税込)。この一升瓶だけです。
早い者勝ちになります。ひとつ宜しくお願い致します。
なお、通常の「波瀬正吉 大吟醸」は一升瓶と四合瓶とがございます。このお酒ももちろんスッキリ呑みやすく、波瀬正吉氏の優しさと、酒造りへの愛情が伺えるような味わいです。ただし「取り寄せ」となりますので、もしご入り用の方はまずはご相談下さい。
記事投稿者: 鈴木酒店 2009年10月29日 03:34
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